人影を追いかけて更に森の奥へ入ると、一瞬にして辺りの景色が変わった。
少し明るくなり、空も多少見えるようになったが、薄く霧がかかっている。
すぐ近くには大きな建物──城のようなものが見え、ここはその城の庭なのだと理解できた。
「まずは、騎士と魔導師をひとつの場所に集まるようにしようと思う。同時に、騎士と魔導師の教育に特化した制度を整えて……」
「今ある施設で制度を整えて教室を開くか、それとも新しく教会を建てますか」
「新たに、騎士と魔導師のための場所を創りたいんだ……。一先ず、俺の城を半分使うのはどうだろうか。あの城は広すぎるだろう?せっかく素晴らしい城なんだから、無駄にはしたくない」
「えぇ、そうですね。他の者もきっと賛成でしょう。王様のお城の半分を、騎士と魔導師の力を養う場所として教室を開く、ということでよろしいでしょうか」
「あぁ、その通りだよ。制度や設備が完全に整うまでは、この案で進めよう」
「かしこまりました。では他の者には私から事前に話を……」
2人の男は真剣な様子で言葉を交わしながら、城の方へ歩いて行ってしまった。聞こえた会話から、和服の人は王様、燕尾服の人はその仕人か何かなのだろう。
──騎士と魔導師の教育制度。身近なものでは、リーベルクロウ学園が脳裏に浮かぶ。「学園が建つ前は、城で教室を開いていた」という話は、歴史の授業で聞いたことがあるような……。