みずくらげ

名無しのWのBL本は
【題】可愛いひと
【帯】使わない二人分の食器を捨てられずにいる
【書き出し】浅い切り傷ほどじくじく痛む。
です

名無しのAのBL本は
【題】聴こえぬ心音
【帯】知らない表情に遭遇する度 腹の据わりが悪くて困る
【書き出し】感情を読み取られまいとするかのように、煙草に火をつける彼の口許をぼうと見る。
です

名無しのKのBL本は
【題】柔い眼
【帯】祈るような目で見られることが何よりも苦痛だった
【書き出し】会話の絶えた部屋にテレビの笑い声が虚しく響く。
です

名無しのMのBL本は
【題】通り雨
【帯】濡れた紫陽花ごしに顔も見ないで別れを告げた
【書き出し】過激な歌ばかり聴き好んでいるくせに、いざ口論で言いたい事の一つも形にできない。
です

名無しのOのBL本は
【題】背骨をたどる
【帯】寂しい思いはさせないと豪語したのが馬鹿みたい
【書き出し】隣に横たわった男が柔い手付きで髪を梳く。
です

名無しのRのBL本は
【題】寂しんぼ
【帯】あなたに忘れ去られることが死ぬほど怖い
【書き出し】初めて触れた頬はとても冷たかった。
です

名無しのSのBL本は
【題】ひとつに
【帯】不器用ながらに愛したかった
【書き出し】愛されている自信がないとか、情けない悩みを自分が抱くとは思わなかった。
です

名無しのVのBL本は
【題】さよならは言わない
【帯】いっそ蔑んでくれた方がましだ
【書き出し】いつの間にか部屋に増える私物が嬉しくて堪らなかった。
です

名無しのPのBL本は
【題】寂寥感が牙を剥く
【帯】生まれ変わったらアオスジアゲハになりたい
【書き出し】見上げてくる瞳が澄んでいて、何故か責められているようでイラついた。
です